怪塔のなかの不思議な会話です。
「だ、誰が降参するものか。このインチキ怪塔王め!」
 おやおや、そういう声はたしかに、怪塔王の声でありました。そう叫んだ人物は、どこにいるかとさがして見ますと、一階の階段のうしろに隠れて、こっちをうかがっている一箇の怪人物がそれでした。どうしたのか、この人は、自分の首を黒い風呂敷みたいなもので、すっかり包んでいます。
 そうです、この方が『声の怪塔王』でありました。三階の階段から顔を出している方が『顔の怪塔王』でありました。つまり二人の怪塔王は、たがいに勝手気ままな号令を出して、操縦士の黒人をこまらせていたところでありました。声の怪塔王と顔の怪塔王との戦は、まだつづいていたものと見えます。二人の怪塔王なんて、変なはなしです。一体どっちがほんとうの怪塔王でしょうか。

豊中 歯科 命あっての物種